PROJECTS実践
一貫して「場」を作品とするアート活動。2011年の卒業設計を原点に、共同体・対話・環境建築という複数の実践が、順番にではなく並行して走っている。それぞれが前の実験の学びを引き継ぎながら、同じ一つの問い——個人の自由と、全体の調和は、いかにして両立するのか——を、異なる形で試している。
原点ORIGIN
世界が一個の村になるために
卒業設計|NETWORK VILLAGE
この作品でいちばん表現したかったのは、世界がひとつの生きた村になっていく姿だった。情報技術が人の神経系の延長となり、個と個が深く繋がっていく。一人ひとりが、血液の中のヘモグロビンのように、全体の一部でありながら自由に生きている——バラバラになった近代のあとで、人はもう一度「村」に還れるのではないか。
アルゴリズミックデザインの手法でGoogleの道路情報を読み込み、村が世界中で自動生成される建築モデルとして描いた。この一枚の図面に込めた「全体感」が、その後のすべてのプロジェクトの原型になる。そして自分は、この図面を以後15年かけて、概念ではなく現実の場として実装していくことになる——prsm、Cift、NESTO、リトリート、そして建築へと。
せんだいデザインリーグ2011 ファイナリスト/赤れんが卒業設計展2011 藤村龍至賞
共同体COMMUNITY
PROTO
人生をプロトタイプする
東京・祐天寺の廃墟ビル一棟をまるごと使い、「住む」「働く」「つくる」「遊ぶ」をクリエイティブに"プロトタイプ"する、6ヶ月限定のコミュニティ。26人の多様なクリエイターの発想と道具と仲間が集まり、セレンディピティが重なり、弾け、大きな渦となった。解散を最初からデザインに含め、予定通り半年で幕を閉じる——プロジェクトが終われば跡形もなく、すべてが夢のようだった。
期限を切ることが共同体を純化するという手応えと、ここで得たかけがえのない仲間。それが、のちに自らが住民となる拡張家族Ciftの土台になった。
拡張家族 Cift
血縁を超えた意識で繋がる家族
SHIBUYA CAST.の13階フロア丸ごとを賃貸し、自らリスクを取って住民になった。入居条件はただ一つ、「ここに入った人は全員家族だと思い込む」こと。「関係性は既にある」という前提から始める——職種100超のクリエイターたちとの「意識家族」の社会実験は、累計200名を超えて全国に広がり、世代交代を続けている。
「新しい家族の形」としてNHK、読売新聞、GQ等で紹介された。2020年頃、創設者自らの役割を壊すために代表を移譲。中心に権威を置いたり周縁に境界線を引いたりせず、共同体は結果として自然に生まれるにまかせる——その姿勢が、この社会実験からゆっくりと育っていった。同時に、空間を共にするだけでは、求めていた繋がりの質にはまだ少しだけ届かないことも感じていた。
Forbes 30 Under 30 Asia — The Arts(2018)
NESTO
みんなで暮らしのリズムを整える
コロナ禍が浮き彫りにした「怠惰」と「孤独」に対して、「遠くのご近所」というオンラインコミュニティと「暮らしのリズム」というルーティンをサブスクリプションで提供。50を超えるリズム、二至二分のオンラインフェス、110話のポッドキャスト。2021年にシードで1億円を調達した。
2023年12月、役目を果たした感覚とともに会社を清算。中間報告から最終報告まで、失敗の隠蔽ではなく「報告」として公開し、解散はセレモニーで締めくくった。PROTOと同じく、終わりを設計した。3年の実践の末に見えてきたのは、自分の求めるポスト近代的なウェルビーイングは、株式会社という「社会OS」の中では体現しきれないということ。会社という形ごと、静かに卒業した。
対話と和DIALOGUE
対話のリトリート
作り込まない二泊三日
異なる価値観や世界観を持った人たちを招待し、二泊三日で寝食を共にするリトリートを全国各地で開催。プログラムは作り込まず、話し合うテーマに沿って、自然な流れに身を任せながら対話を重ねる。
実践から抽出した三原則——①脱サービス化(約束された価値を提供する意識から離れる)②費用の透明化と平等性 ③複数のホスト(父性と母性の対照構造)。北鎌倉・円覚寺での「調和と対話」、富士聖地での「宗教と対話」など、テーマは宗教・調和・巡礼にまで及ぶ。
エネルギーが集まる場さえあれば、人は自ずと繋がり合う。「本来の自分へと立ち返っていく感覚を持った」「この場はホームだと感じた」——参加者のそんな言葉が、その手応えを静かに裏づけてくれている。
環境建築ENVIRONMENTAL ARCHITECTURE
眼に見えない世界と繋がる精神的な合理性を設計指針とした、ポスト近代的な建築。言葉と共同体で耕してきた「和」を、いま器=環境そのものとして立ち上げる。JOMON・TORUS・Rebornは、それぞれ別の敷地・別のテーマでありながら、同じ問いを空間として翻訳した並行する試みである。
JOMON
縄文的感性を呼び覚ます建築
人と自然とが分かち難く共存していた縄文の感覚に立ち返り、共同体の中で「和」が自ずと生まれる装置としての建築を目指した。大黒柱に支えられた茅葺屋根、火の絶えない囲炉裏、滝、円環的な間取り。「暮らすこと」と「祈ること」の境界を溶かす、いのちの繋がりを思い出すヒーリングセンター。円錐形のダイアグラムは、空間だけでなく一日の時間の巡りにも「和」が生まれるよう設計されている。
TORUS
心臓の電磁場を建築に翻訳する
心臓が生み出すトーラス状の電磁場を建築的に解釈した、16人程度が中期滞在できるリトリートセンターの設計。中心に配した掘り込み式の円形スペースから、祈りのエネルギーがトーラス状の流れを生み、人々のコヒーランスを高めるとともに、地球磁場とも呼応する。「和の配置」——中心は透明——が、そのまま空間化された作品。
Reborn
支笏湖リトリートセンター構想
北海道・支笏湖のほとりに思い描く、「再生と調和のためのウェルビーイング・インフラ」。国立公園の自然のなかで、支笏湖の青く透明な水の質感から着想した建築を構想している。瞑想や対話、自然との関わりを通じて、人と人、人と自然との関係が再生されていく場。
現在地NOW — THE LATEST
Coherence Circle
「和」を味わう二日間
いまの実践の結晶が Coherence Circle——2022年以来つづけてきた対話の場の積み重ねの上に、2024年6月からこの名で歩み始めた招待制のエクスペリエンスである。
コヒーランスのフィールドの中で、自分と他者と世界とのつながりを思い出していく二日間。一人ひとりが「願い」の位相まで深く潜り、円の全体からは「洞察」が立ち上がる。その両方を経たとき、個人の枠を超えたコレクティブな気づきと癒し——「和」——が、透明な共鳴の場(Coherent Field)に自然と立ち現れる。卒業設計から続く「世界を一個の村に」という問いが、一人ひとりのスケールで実践されている場所。